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vol.21-4

発達障害児へのアプローチ

発達障害をテーマとしたこれまでのブログでは、臨床医師の立場から、病気・環境的要因・発達要因の3方向から診立て、多角的な評価をする重要性をお話ししてきました。


障害特性もあれば、育ちや個性、人間関係、日々の環境や受ける対応など、さまざまな要因によって、そのお子さんが見せる顔は、状況や場面によって違います。「その子らしさ」を損なわないよう、いろいろな視点を大切に、適切に介入できるよう心がけています。


「発達障害を抱えるお子さんへの接し方」について、現場で丁寧に接しておられる教員の方々や保護者の方などから質問や相談を受けることがよくあります。


発達障害のある子どもにとって、世の中の情報や刺激は偏ったり独特な形で入ってくるため、「わからない」の積み重ねです。そして、本人なりの独特の表現や行動を通して気持ちや意志を伝えようとするが、これは「伝わらない」の積み重ねになりがちです。


こうした「わからない」「伝わらない」日常の積み重ねが、人や場に対する不安感、そして嫌悪感や不信感となり、併存症やいわゆる「問題行動」につながっています。このため、それぞれのお子さんが問題を認識しやすくする方法、相談しやすくする方法、そして解決をしやすくなる方法を一緒に考えることが重要です。


ASDのお子さんには、音や色、光などの感覚刺激に敏感な方がいらっしゃいます。こうしたお子さんとコミュニケーションを取る際には、例えば話し声を小さくしたり、資料を使用する際には色味を減らしたり、内容をシンプルにするなどの工夫をした方がいいかもしれません。


また、人前で言葉を発することが苦手なお子さんには、絵カードを使ったり、ボディランゲージを有効に使う、メールや手紙といった代替手段を用いる、といった方法が他者とコミュニケーションを取る際には有効かもしれません。


他者の感情の影響を受けやすい方、行間を読むことが苦手なお子さんに対しては、物事を具体的に、穏やかな表情・口調・態度・雰囲気で伝えることで、内容が伝わりやすくなるかもしれません。

 

本人の訴えを丁寧に聞いていくと、一見奇妙に見える/聞こえる行動や発言も、そのもととなる本人の考えや気持ちが見えてくることがあります。


「相手に興味を持って敬意を忘れない」


医療従事者として大切にしている言葉ですが、発達障害を抱えるお子さんを見守る保護者の方、学校の先生方、施設や医療機関等の支援者など、周囲の大人にとっても大切な心得かもしれません。


・全ての子どもに対し、それぞれの価値観や興味・関心の内容を大切にする

・子どもたちの得意や不得意、快・不快を尊重し、「大人を中心とした社会のルール」を押し付けたり、縛りつけるようなことをしない


これらを大事にして子どもたちに向き合う人々が少しずつでも増えていけば、障がいの有無に関係なく、誰にとっても生きやすい社会になるのではと考えています。

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<この記事を書いた人>

Takeshi Kiyoaki
児童精神科医・精神科医
武士 清昭
Takeshi Kiyoaki
略 歴
東京都出身。東邦大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経医学講座に入局。2年間の研修医生活を経て大学院入学。大学院にて研究のかたわら、精神病の予防や回復のデイケア、思春期臨床に携わる。その経験から都立高校の専門医派遣事業に関わり、学校保健の実績を積む。以来、一般精神科臨床と同時に、児童精神科医として10年を超える思春期臨床のキャリアを持つ。
専門分野
精神科リハビリテーション
社会精神医学
児童精神思春期青年期精神医学
趣 味
アニメやゲームなどサブカル/バンド活動(ベース担当)
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