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vol. 4-1

精神科医への道

高校入学当時、将来は国家公務員や弁護士をめざそうと、文系クラスを選択していました。父親は歯科医でしたが、私は小さい頃から不器用でプラモデルや工作系が苦手。自分が医者になろうとは夢にも思っていませんでした。


ところが入学して間もない、高校1年の夏にある出来事が起こります。


ラグビー部夏合宿の練習中に脳挫傷のケガを負い、術後は半身マヒの後遺症が残るかもしれないと診断。高校2年の春まで右半身が動きづらく、ラグビーはおろか、体育の授業は欠席していました。


幸いにも回復が早く、主治医の脳外科の先生のようになりたいと思うように。高校2年の秋、理系クラスに変更し、医学部に進学しました。当時、外来で先生に会うたび、「こうやって助かったのだから医者になれ」と言われ続けたのも理由のひとつかもしれません。


「医者に助けてもらった」経験があり、「なれるのだったらめざしてみよう」というシンプルな考えから医師への道が始まりました。


とはいえ、医学部時代、脳外科の研修に行っても顕微鏡を使った実験系など、細かなことが嫌いで苦手なのは変わらない。根っからの文系の私に向いている精神科を選びました。


学生時代は、旅行が趣味でバックパッカーをしていました。バイト代で買える往復チケットでタイのバンコクまで行き、現地で情報収集をして行き先を決める旅。軍事政権だったりその先は山賊が出ると言われたところは避けながら行けるところまでと、バングラデッシュ、インド、ネパール、パキスタンのカラチを周りました。


大学病院で外務省医務官の公募があった際は、このバックパッカーの経験もあり白羽の矢が当たることに。医務官として海外での職場のメンタルヘルス(産業医)に携わった経験は、現職の外務省入省につながっています。


ただ…バックパッカーの経験が今の仕事に役立っているかというと何もない(笑。


何かに役立つと思っての行動ではなく、好奇心の方が勝って動いてしまう。思えば、この放浪癖はケガから復帰した高校時代から。「拾ってもらったいのち、動けるときに動こう」という気持ちが強いのかもしれません。

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オススメの一冊

『かくかくしかじか』

第一巻2012年7月発売/著者:東村 アキコ/出版社:集英社
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『東京タラレバ娘』など数々のヒット作を手がけるマンガ家・東村アキコさんの自伝です。美大出身の東村さんがマンガ家になるまでの、さまざまな葛藤が描かれた「女性版マンガ道」。進路に悩む学生のみなさんにオススメの1冊です。

<この記事を書いた人>

Yoshida Tsunetaka
精神科医・臨床心理士・公認心理師
吉田 常孝
Yoshida Tsunetaka
略 歴
大阪府出身。関西医科大学医学部卒業後、同大学精神神経科学教室に入局。翌年、同大学院入学。精神病理学のほか、放射線科学教室に学内留学し、当時先駆けとなるニューロイメージングの研究に携わる。大学病院にて「物忘れ外来」「家族会」を立ち上げ、認知症の臨床や研究、家族支援に従事。精神病理学の臨床研究として、摂食障害を中心に思春期の症例を取り扱う。関西外国語大学精神科学校医としても勤務。大学病院高度救命救急センター勤務後、2008年に外務省入省。在ニューヨーク総領事館を含む4カ国の海外勤務を経て帰国。2019年より外務省診療所健康管理医(産業医)。
専門分野
リエゾン精神医学
老年精神医学会
産業精神医学(職場のメンタルヘルス)
臨床心理学
温泉療法医
趣 味
ラグビー/旅行
学生時代のポジションは主にプロップやフッカー、ケガ人が出ると時おりフランカー。旅行の趣味が高じて「温泉療法医」を取得。
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