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vol.20-2

生きる意味を問う

定期的にロゴセラピーやユング心理学の研究会に参加しています(コロナ禍以降はあまり参加できていませんが)。

 

ロゴセラピーとは、オーストリア・ウィーン生まれの精神科医、V.E.フランクルによる心理療法。ロゴとはギリシャ語で「意味」を指し、ロゴセラピーでは、患者さんが自らの人生の意味を見出すことを援助していきます。この治療技法は、フランクル自身のナチス・ドイツの強制収容所での体験を経て生まれました。

 

人間は本来、人生を意味あるものにしたいと考え、どんな状況においても人には生きる意味があり、自らの意思で行動を決める自由があることを説いています。つまり、人生の意味を探すのではなく、人生の意味はすでに存在しており、自らが人生に問われている立場であるということ。

 

例えば、神経症を抱える患者さんの治療で用いられ、その対話のなかで患者さん自身の人生や価値に着目し支援していきます。

 

ロゴセラピーのセミナーには、私のような心理士は少なく、終末期医療のドクターや対人支援を行う看護師、障がい者就労支援の事業所で働く福祉関係者など、いのちの最前線で働く方々が参加されています。各専門家がそれぞれの体験から生き方について考えるとても有意義な空間です。

 

心理士として子どもたちのカウンセリングの際に気をつけているのは、児童・生徒の主体性と尊厳です。子どもたち自らが「何をしたいのか」「どうしたいのか」が大切です。

 

とはいえ、何をしたいのかわからない子どもたちがいます。
一緒に時間をかけて何がわからないかをときほぐす。

わからないのは、ただ単に、わかる環境にいなかっただけ。

 

何かできる可能性があることを、体感を持って理解すると人は変わります。相談時にアドバイスする際は、子どもたちの様子や態度を観察して、納得感があるか否かに注力しています。

 

日常からリラックスした関係性を構築することも大切です。安心できる、圧力を感じない関係性を築くことで、子どもたち自身がSOSを発する環境が整うと考えています。

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オススメの一冊

『それでも人生にイエスと言う』

哲学・思想/出版:1993年12月/著者:V.E. フランクル/出版社:春秋社
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393363607.html

ロゴセラピーの創始者、V.E.フランクルの講演集。「人は意味から常に問いかけられる存在であり、その問いかけに答えることで結果的に人生に意味を見いだせる」と語っています。いま自分に何が問いかけられ、何をすることに意味があるのかについて考えることは、常に情報にあふれ、欲望を刺激される現代において重要です。「人生を肯定する」ことを唱える本書は、自分に立ち戻れるような一冊です。

<この記事を書いた人>

Kikuma Shintaro
臨床心理士・公認心理師
菊間 慎太郎
Kikuma Shintaro
略 歴
神奈川県出身。学習院大学大学院人文科学研究科臨床心理学専攻博士前期課程修了。大学院在学中より東京都ひきこもりサポートネットにて電話・メール相談・アウトリーチ(訪問支援)事業に従事。大学院修了後はダイヤル・サービス株式会社にて電話相談員、目黒区スクールカウンセラーとして小学校勤務、小平市就学相談室にて発達検査員として勤務する。これまで主に教育相談、不登校・ひきこもり支援、発達検査に携わる。
専門分野
学童期・思春期・青年期
ユング心理学
ロゴセラピー
趣 味
映画鑑賞/音楽鑑賞
映画レビューサイトに500以上のレビューを投稿しています。特に好きなのは、アカデミー国際長編映画賞『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督の作品。人が変容していくさまが丁寧に描かれ、セラピーのプロセスに近いものを感じています。
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