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こころの専門家リレーメッセージ
カウンセラーは身近な相談相手
臨床心理士・公認心理師
相田 早織
親の仕事の関係からアメリカで生まれ育ち、幼少期と中学3年から高校卒業までトータル10年ほどアメリカ西海岸のカリフォルニア州で暮らしていました。日本人が多いイメージのカリフォルニア州ですが、現地校に通い、校内には自分と家族、そしてほか数人のみが日本人というようなほぼ完全な英語環境。その頃、最も頼りにしていたのが校内に常駐していたスクールカウンセラーでした。校内にはこの「カウンセラー」に加え「セラピスト」という心理療法を行う先生もいて2人体制。役割がしっかりと分けられているようでした。
このスクールカウンセラーの先生とは、全生徒が定期的にマンツーマンで面談を行うプログラムが組まれていて、初めて会ったときからとても親切にお話を聴いてくださいました。授業や学校生活、進路についてなど、さまざまな相談に乗っていただき、当時、英語がわからなかった私の一番の相談相手でした。
もともと日本の中学で、なんとなく居づらさや息苦しい雰囲気を感じており、気軽に相談できる大人がいずに苦しかったのですが、アメリカに渡って、こんなに身近に自分の相談相手に乗ってくれる人がいるんだと感動さえ覚えました。この海外でのカウンセラーの先生との出会いが、心理学に興味を持つきっかけとなりました。
とはいえ、大学入学の頃はまだ「心理士」という職業には結びついておらず、専攻分野を決めた程度。進学先の大学では、ネズミが学習する過程を学んだり、知覚や視覚など脳科学を研究したりする実験心理学がメインでした。子どもや学校向けの心理学についてもっと学びたいという思いから大学院に進学。そこでやっと具体的な仕事内容が見えて心理士を志すようになりました。
普段はスクールカウンセラーとして小中学校で働いています。小学校の児童とはオセロやジェンガなどの遊びを交えてお話を聞いたり、中学ではカウンセリングを通じて困っていることの解決のお手伝いをしたり。児童・生徒に加え、保護者や教員の先生のご相談にも乗っています。
不意にポロっと出てきた言葉に大事なことが詰まっていることがあります。子どもたちの話を聴くときは、その“一言”を逃さないように心がけています。意識的に「何か話したいことはない?」という声掛けをすることで最後の最後に話が始まることも。つくづく関係性をつくって聴くことが大切だなと感じています。
心理士は暗く長いトンネルに入って出口を探しているクライエントさんの少し後ろから小さなライトを照らしているような仕事です。クライエントさんが悲しいときは私も苦しく、どうしたら力になれるか日々考えています。クライエントさんが少しでもいい方へ変化していることがわかると、本当に嬉しく、やりがいを感じます。
クライエントさんの経過がいい方向に向かい、自然とフェイドアウトしているのが一番いい。私のことは忘れて楽しく生活をしていることがベストな状態です。
「一期一会(いちごいちえ)」
心理士としての出会いもプライベートでの出会いも、その多くが1回で終わるもの。でも、私自身、その1回の出会いに救われた経験が数多くあり、今も一つひとつの出会いを大切にしています。相手の方にとってもいい出会いになるといいなという思いで、毎回のカウンセリングに臨んでいます。<この記事を書いた人>
音楽を聞くのも演奏するのも好きで、ピアノを習っていたため、大学の軽音部ではキーボードを担当していました★