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vol.22-2

「自分らしく生きる」をサポートする

普段は、精神科の訪問看護師として、精神科医から指示を受け、精神疾患を持つ方のご自宅を訪問。生活していくうえで困っていることについて話を伺い、一緒に悩み、一緒に解決策を考えています。疾患も年齢もさまざまな利用者の方がそれぞれ自分らしく生きていくためのサポートを行っています。またご家族からの相談にも応じ、家庭内での関わり方や病状について必要な説明を行います。


数ある訪問看護ステーションのなかでも、精神科は疾患専門のステーションの形をとることが特徴です。精神科は症状の把握が難しく、しっかり学んでいないと何が起こっているのか、どう判断していいかがわからないからです。


例えば、患者さんが朗らかに1人で「ふふふ」と笑っていた場合、私たち精神科専門の看護師は、幻聴に応えて笑っているのかもしれない、と捉えることがあります。


お薬はきちんと飲めているか?夜は眠れているか?悪化するきっかけがあったのか?などと考えを広げていき、ご家族へのヒアリングなどもしながら精神科特有の観察ポイントをつなぎ合わせていきます。そこから、何がどう影響してこのような状態に至っているのかを考え出し、それを良い方向に導くにはどうしたら良いかを考えていきます。


また精神科のお薬は複雑なものが多く、どんな効果がありどんな副作用があるかについての説明も不可欠です。お薬の効果と副作用を見極め、医師に報告・相談する必要があります。ご自宅で生活している精神科の患者さんは一人暮らしが多く、ご自分では気づかないことも多いため、精神科の訪問看護師は、こころだけでなく身体の症状も合わせて観察しながら、その人が安心して生活できるようにお手伝いをしています。


また、ご本人がダメだ、できない…と否定的になっていることも、私たちから見るとできていることがたくさんあったりします。その人の良さを見つけて言語化し、自分の強みを知り楽しみを見つけられるようサポートします。


心理を専門的に学びたいと思う気持ちは、精神科病棟の看護師であったときに強くなりました。目に見えないココロをひも解いていくには、その方のお話をしっかり聞くことが必須ですが、お聞きした内容をどう解釈してどう解決に向かえるようにしていくかは、知識がないと難しいと思いました。


また精神疾患は、子どものころからの傾向や環境も少なからず影響することを知り、子どもたちのメンタルヘルス教育にも取り組みたいと公認心理師の資格を取りました。


心理検査や心理学の理論は未だ勉強中ではありますが、患者さんと接するなかで無意識のうちに実践していたやり方が、理論や精神療法とつながっていくことが面白く、資格取得のための勉強はとても興味深いものでした。私の心理支援は実践ありき。学問の裏付けで自信にもつながりました。


ここ数年、精神科訪問看護の現場では、児童思春期や青年期の利用者さんも増えてきました。思春期特有の「学校に行きたくない」「死にたい」という直接的な訴えも、その背景に何があるのか話を聞きながらひも解いていきます。


公認心理師を取得してからは、さらに利用者さんの思いの根底にあるものを読み解いていく醍醐味を感じるとともに、まだまだ勉強していかなくてはと身の引き締まる思いです。

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コミュニケーションのワンポイント

「ありがとう」を使いこなす

日常的に「すみません」という言葉を使いがちですが、必要ない場面で謝ることに違和感があります。例えば、駅でエスカレーターを譲ってもらったときは「すみません」より「ありがとう」の方が、素直に感謝を伝えられるし、相手も気持ちがいいでしょう。一方で、他人よりも家族や近しい人への感謝は何となく表現しづらい傾向もあるようです。「ありがとう」はコミュニケーションの潤滑油。積極的に使いこなしていきましょう。

<この記事を書いた人>

Chino Yuriko
公認心理師・看護師
千野 由里子
Chino Yuriko
略 歴
新潟県出身。東邦大学医療短期大学卒業後、東邦大学医学部付属大森病院(現東邦大学医療センター大森病院)に看護師として勤務。総合内科、総合外科、救急外来、産婦人科、整形外科、神経内科、小児科、精神科等で幅広い経験を積む。精神疾患を抱える患者さんの生活をお手伝いしたいという思いから精神科専門の訪問看護ステーションに転職し、児童思春期・青年期を中心に、困りごとの解決をサポート。2021年、公認心理師免許を取得。現在は、医療安全に関するリスクマネジメントや医療従事者のメンタルサポートに携わる。
専門分野
看護
児童思春期・青年期
趣 味
プロレス観戦/アニメ・マンガ/ゲーム

月に1度のプロレス観戦は欠かせません。力と力のぶつかり合いのなかにも心理戦があり、痛みや苦しみを乗り越え、打ち勝つロマンを感じます。アニメ・マンガやゲームは子どものころから大好きで、今も週刊少年ジャンプを購読しています。
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