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こころの専門家リレーメッセージ
1冊の本をきっかけに心理士へ
臨床心理士・公認心理師
竹澤 綾
中学生の頃、『シーラという子』という1冊の本に出会いました。
明るく楽しい学校生活を送っていましたが、手に取る本はなぜか重めのものばかり。そのなかでも本書は、アメリカで実際に虐待を受けていた少女の実話で、とても衝撃的な内容でした。子どもが苦しさを抱えて生活している事実にやりきれない理不尽さを感じ、将来はそんな子どもたちを救う仕事がしたいと思うように。著者が児童心理学者であり、物語のなかで「カウンセラー」という言葉を初めて目にしたことが心理士の道へ進むきっかけとなりました。
高校生になってもその思いは続き、心理学のなかでも、虐待の大半が起こる家族について学ぶ「家族療法」に惹かれていきました。進路選択も家族療法の分野で著名な大学に決めて入学。家族療法の研究室に所属し、思い描いていた勉強はできましたが、親子の複雑な心境や背景を学ぶなかで、当事者の気持ちが理解できずに悩むことがありました。
私は幼い頃からハッキリした性格で、自分で決めたことは躊躇なく行動に移せるタイプ。思い立ったら一直線。中学受験の勉強に打ち込み成績が良くなっていく友人を羨ましく思い、小6の夏に、突然、親に中学受験をしたいと直談判。志望校一本に絞り、親の付き添いなく一人で受験をするような子どもでした。
大学の実習授業でケーススタディを扱っても「こうしたらいいのに…」という解決策が頭に浮かび、当時の私には、困っている人のモヤモヤとした気持ちが理解できないまま。気持ちを受け止められないことに力不足を感じ、一度心理から離れ、さまざまな人に出会おうと心理支援とは関係のない仕事に就きました。
就職先のIT企業ではプログラマーとして複数のプロジェクトに関わりました。ひとつのシステム開発に社内外のさまざまな部門からメンバーが集められ、数か月後の納品をもってチームが解散。人の入れ替わりが激しい業界でした。おかげでその分、日々の業務のなかで幅広い世代やさまざまな価値観、考え方に触れることができました。
その後、結婚を機に退職し、子育ての経験もし、たくさんの葛藤を抱えるなかで、人の温かい言葉に励まされる場面が増えていきました。その度に、こころをケアしてもらうことのありがたさを痛感し、改めて心理士になることを決意。家族療法の専門性を深められる国際医療福祉大学大学院に入学。
大学卒業から8年の歳月を経て、心理の世界へ戻りました。
「うまくいっているときは、その道に合っているということ」
昔読んだ少女マンガのセリフです。ポンポンと話が進むとき、自分の気持ちがついていけないことがあります。頑張ってきたことであれば、自分に合っている道と信じ、逆に上手くいかないときは、合っていなかったと割り切りやすい。諦めたくないことであれば、立ち止まり考え直します。この言葉のおかげで、自分の状況を客観的にとらえるようになりました。<この記事を書いた人>
発達臨床心理学
キャンプでは自然に囲まれてゆっくり過ごすと頭がスッキリします。黙々と集中できる編み物は、適度な疲れも心地よい。麻ひもで作ったかごバックは重宝しています。