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vol.14-2

多様化社会を生きる子どもたち

多様性の時代と言われながら、社会のなかでその考えが認められないことがあります。現代の子どもたちは、社会からのメッセージと、学校や家庭など自分が置かれている環境からのメッセージが違い、そのはざまで混乱することが多いような気がしています。


例えば、不登校の問題。一昔前は、学校に行かないなんてとんでもないという価値観が一致していました。今は「学校がすべてではない、行かなくてもいい」という考え方がありますが、学校や家庭すべてがその考えに一致するわけではありません。選択肢が増えたからこそ、自分がこれでいいのだと納得するまでに時間がかかり、自分が本当に良いのだと思えないと次の一歩が踏み出せない難しさがあります。


また、情報化社会になり、子どもたちは他の考えや言葉の断片に翻弄されることも多いのではないでしょうか。学生時代は、他人を鏡として、自分はどういう人間であるかという“自分軸”をつくろうとする期間でもあります。その貴重な学生時代に、生身の人間ではなく、多くの断片的な情報に触れていくことは、迷いや悩みが生じる一因であるように思えます。


私の興味は、家族関係やジェンダーにあります。


幼い頃から、今も現役コーチを務める父親の影響で四姉妹全員がバスケットボールを習っていました。家族全員で自営業の家の手伝いもし、家族の輪が最優先であり、個別の関わりは少なかったように思います。それが個の特性に合わせた関わりを持つ「心理士」という職業に興味を持った原体験かもしれません。


大学では「乳幼児研究会」に入り、3歳未満のお子さんとお母さんに関わりながら母子間関係について学び、ジェンダーを扱う研究室では、個人の資質と後天的に求められる女性の役割とのギャップについて研究。卒業論文もジェンダーの視点から女性に多い「摂食障害」についてまとめました。


大学で家族関係やジェンダーについて学ぶほどに、社会の仕組みが家族の仕組みをつくり、そして家族のなかで力が弱い者に社会の問題が表出するという構図を見るようになりました。


個にふりかかる課題を個の問題に限定しないという視点を持つことは、カウンセリングや相談対応においてもとても重要です。


みなさんも困っていることを自分だけの問題と捉えず、ぜひ気軽に話してもらえればと思います。

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オススメの一冊

『きまぐれロボット』

短編集/2006年1月発売/著者:星 新一/出版社:角川文庫
https://www.kadokawa.co.jp/product/200510000014/

星新一さんのショートショートのなかでも定番の名作です。サクサク読めるのに、不思議な世界へ誘ってくれるSFの短編集。小説など長い文章が苦手だった中高生の頃、よく読んでいました。内容はファンタジーですが、あり得そうな未来の話にワクワク。短時間でタイムトリップできる面白い作品です。

<この記事を書いた人>

Kuboshima Marie
公認心理師
窪島 麻里江
Kuboshima Marie
略 歴
島根県出身。お茶の水女子大学生活科学部(発達臨床学講座) 卒業後、人材派遣会社に勤務。営業職として派遣スタッフの仕事紹介、相談業務に従事。その後、結婚、出産、育児を経て、東京都ひきこもりサポートネットの立ち上げメンバーに加わる。メールや電話、訪問により、ひきこもりでお悩みのご本人やご家族からの相談に応じる。同時に、いのちの電話メール相談のスーパーバイザー職を兼務。現在は、母子相談員として出産・育児相談のほか、思春期相談にも対応している。
専門分野
思春期・青年期
ひきこもり相談
女性相談
趣 味
ヨガ/ボードゲーム/お笑い

週1回のヨガを続けています。ヨガの先生がつくり出す空間はリラックスそのもの。こころとからだのバランスが整います。自宅にボードゲームは200個ほどあり、頭を切り替えたいときにオススメ。お笑いも大好きで同郷のかまいたちファンです。
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