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vol.13-3

こころを学ぶ

ネット社会と呼ばれる現代では、誰もがさまざまな情報にアクセスすることができます。例えば気分が落ち込みがあったとき、ネット情報からのいろんな症状を自分に当てはめ、うつ病だと思い込んでしまう方もいるかもしれません。


一方で、精神科医である私たちは、普段の診療において適切な判断に努め、病気の過剰診断を可能な限り避けるようにこころがけます。人は漠然とした知識しかないと、不安などから病気であるように思い込んでしまう傾向があります。


だからこそ診断基準やガイドラインがあり、それに沿って適切な診療を行うことが重要です。つまり、ここまでは病気ではない、その先は治療が必要な病気と切り分け、適切な治療を行うことです。


そして、同時に大事なことは、もし精神的な病気を発症してしまった時に、早期介入や早期支援に結びつける仕組みが社会に存在することだと思います。


来年2022年度より、高校の教科書に「精神疾患」の項目が約40年ぶりに復活し、学校で精神疾患についての教育が始まります。


精神疾患の予防に最も大切なのは、適切な精神疾患についての知識が多くの人に広まることです。わからないものは怖いと感じてしまうのは人の常ですが、逆説的に、わかっていれば怖くなくなります。

 

誰でもかかる可能性のある精神疾患だからこそ、多くの人にきちんと知ってもらうことが大切です。


統合失調症になると人を傷つけるのではないか?という誤解がありますが、まずは事実ではないことを知ることが大事。早めに誰かが気づいて早く適切な医療につなぐことが悪化させない第一歩です。周りに知識がないと、職場でおかしいと感じても適切に支援できず埋もれてしまうことがあります。学校では子どもたち本人が避けられ、何となく学校に行きづらくなり、ひきこもってしまうケースもあります。


普段接している人たち、同僚や家族、学校の先生や友だちの知識の獲得が予防につながります。


多くの人たちが精神疾患にはどんなものがあって、どんなときに医療機関につなぐのか、どのように対応したら本人のためになるのかを考えて行動できれば、早期支援につながり予後も良くなります。


正しい知識は、人の意識を変え、社会を変え、課題解決の大きな一歩となります。精神疾患への誤解や偏見は根深いものがありますが、これからも予防への取り組みを続けていきたいと考えています。

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オススメの1冊

『風の谷のナウシカ』

漫画/第1巻1983年7月発売/著者:宮崎駿/出版社:徳間書店
https://www.tokuma.jp/book/b504001.html

映画は1巻半くらいまでのストーリーですが、漫画版は7巻まで話が続きます。30年以上前の漫画ですが、世界が汚染され人が住みづらくなっていく様子は、コロナ禍にも通じるものがあり、再度注目が集まっています。中学生の頃、初めて読みましたが、今でも時折読み返したくなる本です。
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連携しやすい仕組みづくり(12/23更新)

<この記事を書いた人>

Suzuki Kouta
精神科医・公認心理師
鈴木 航太
Suzuki Kouta
略 歴
東京都出身。北里大学医学部医学科卒業。初期臨床研修修了後、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室に入局。精神科単科病院にて主に救急・急性期治療に携わる。2016年より同大学大学院医学研究科博士課程(社会精神医学)に入学し、2020年9月修了。現在、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 特任助教。研究活動や研修医教育のほか、一般精神科臨床、認知症外来・往診、産業医など幅広い領域の精神科医療に従事している。
趣 味
海外旅行/ボルダリング
これまで世界一周も含め38か国ほど訪問し、各国の精神科病棟を巡ったことも。ボルダリングはまだ初心者ですが、あれこれ登り方を考えて完登できた時はとても達成感があります。
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