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こころの専門家リレーメッセージ
精神科「予防」の研究
精神科医・公認心理師
鈴木 航太
もともと、高校生の頃から脳やこころの分野に興味があり、脳科学や心理学の本をよく読んでいました。ちょうど解剖学者の養老孟司さんや脳科学者の茂木健一郎さんが著名になり、世間一般的にも脳やこころの仕組みに関心が高まった時代だったように思います。
脳の構造よりも心理学といった機能に面白さを感じるように。親が医師であったことも影響し、医学部をめざすようになりました。医学部を卒業して研修医になってからも、精神科医への志は変わらず現在に至ります。
精神科を専門として初めて勤務した慶應義塾大学病院では、神経心理学や精神病理学、精神薬理学、社会精神医学など幅広い分野があり、各分野の第一人者が在籍していました。好奇心旺盛な自分にとって、その専門領域の幅広さに惹かれました。
精神科2年目以降には、医局の出向先である単科精神科病院にて主に急性期を担当。一般の精神科病院では対応の難しい、自傷他害の恐れのある措置入院などに対応していました。
初期研修医の頃に経験した救急外来においてもパニック発作や自殺企図が多く、同じ方が数日後に大量の薬を服用して運び込まれるケースも。脳梗塞や心筋梗塞などの病気と異なり、その場で救命できたとしても、精神疾患を患っている方は繰り返し救急外来を受診することになってしまうケースも少なくありません。
10年、20年前に対応できていればこうした事態は回避できたのではないか?
発症するもっと前に介入できていれば現状は変わったのではないか?
こうして精神科「予防」への興味関心が一層高まり、大学院博士課程への入学を決めました。専門は社会精神医学。医療と社会をつなぐすべての手法や研究を指します。
患者さんは何らかの理由があり医療機関を受診して初めて治療を受けることが一般的です。病院で医師が対象者を待ち構えていているだけではなく、医療機関の外に出て早期に介入できれば重症化を防ぎ、入院も回避できるケースも多々あります。地域で早期に発見できたり、学校やスクールカウンセラーの力を借りて社会復帰させたり、疫学的に現状を調べたり。そのため、これまで、認知症高齢者の認知症予防、精神病の早期発見について、精神疾患を有している方の社会復帰に取り組んできました。
社会に還元できてこその医療です。
病院の中で完璧な医療を求めるよりも、社会として精神科医療を早期発見していく。精神科の重い部分だけがフォーカスされがちですが、隔離が必要なくらい重症の精神障害は全体のごくわずか。多くの患者さんが外来です。
他の病気と同じように、こころの不調を感じたら受診してみる。そんな社会であれば防ぐことのできる精神障害も増えるはずです。
睡眠
ぐっすり眠ると、夜にはあれこれ思い煩っていたことも翌日には解消されることが多いです。寝つきが悪い方は、寝る前にストレッチしたり、軽く目をつぶってマインドフルネス瞑想をオススメします。<この記事を書いた人>
▼学術論文
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32573085/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29547755/
これまで世界一周も含め38か国ほど訪問し、各国の精神科病棟を巡ったことも。ボルダリングはまだ初心者ですが、あれこれ登り方を考えて完登できた時はとても達成感があります。