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vol.12-3

「自分の気持ちを話す」という体験

現在は、スクールカウンセラーとして、生徒や保護者・教員の先生からの心理相談に応じています。また教員の先生方への心理的サポートを通して、生徒を支援する仕組みの必要性も再認識しています。


私たちスクールカウンセラーの勤務は、週1日が平均。よって、毎日、子どもたちと関わる教員や保護者を後方支援することも大切な仕事です。


一般精神科のクリニックでは、10代から80代まで幅広い年齢層のカウンセリングを行っています。成人のカウンセリングでは、子どもの頃からの消化しきれない思いをまざまざと語る方が多くいらっしゃいます。


「自分の気持ちを話す」という体験は、いくつになっても意義深いこと。


最近、こんなことを話す子どもたちがいます。

 

「自分は周囲の友だちより恵まれているのに、苦しいなんて言えない」
「両親もそろっていて塾や習い事も好きなことさせてくれるのにリストカットをやめられない」
「虐待やいじめがないのに、死にたい気持ちになることがある」


人の気持ちを思いやる共感力が高く、客観的な視点を持ち合わせている子どもたちで、親御さんに連れられて来る子どもより自分の意思で来院する子どもたちに多い傾向です。


新型コロナウイルスの感染拡大を通して、全世界の人びとが大きな危機を体験することになりました。一方で、個々の一人ひとりが抱える日常生活の体験はどこか見過ごされてしまうのではないかという強い危機感を抱いています。


私たちを取りまく環境が大きく変容したり、戦争のような過酷な状況下で被害に遭う、大切な人が亡くなるなどの場面では、むしろ、「病んでる」ように見えるこころの状態になることのほうが、逆説的に「健康」なこころの状態であるといえます。一時的に大きな混乱を抱えますが、ゆくゆくは自己治癒力も働きやすい。


一方、大災害、虐待、いじめ、貧困などわかりやすい理由がないのに悩みや不安を抱える子どもたちがたくさんいます。いじめはないけど学校に行きたくない、力が湧かない、こんな気持ちになる自分が変なのではないか、こんなことで辛いと思ってはいけないのではないか…。


しかし話を聞きながら過去の体験を追っていくと、相手や周囲に合わせて器用に振る舞い、自分の気持ちに蓋をしていることも多い。


だからこそ、心理士として一人ひとりのこころに寄り添い耳を傾けることに全力を注いでいます。

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<この記事を書いた人>

Hara Mihoko
臨床心理士・公認心理師
原 美穂子
Hara Mihoko
略 歴
愛知県出身。大学在学中に交換留学を経て、卒業後、通信会社に勤務。東日本大震災を機に臨床心理士をめざして退職。武蔵野大学大学院では、被害者支援やトラウマケアの研究、学校における危機管理や緊急支援対応などの実践的な活動を行う。東京都ひきこもりサポート支援、神奈川県性被害支援センターで心理相談に携わるなど、一貫してこころケアの現場に立つ。現在は、スクールカウンセラーとして児童生徒や保護者、教員の心理相談のほか、精神科クリニックにて幅広い世代を対象にカウンセリングを行っている。
専門分野
臨床心理学
学校臨床
トラウマケア

▼紀要論文
「自然災害時に子どもの心のケアに携わる教員のニーズに関する研究 : 関東圏で東日本大震災を体験した教員のインタビュー調査」
http://id.nii.ac.jp/1419/00000250/
趣 味
旅行/スポーツ観戦/F1観戦
のんびりした田舎で遺跡巡りの旅もいいし、都会の美術館やショッピングも好きです。スポーツはライブ観戦がいいですね。大好きなF1レースの爆音はたまりません。
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