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vol.12-1

トラウマケアの研究

大学在学中は国際経済を学び、留学生の多い国際色豊かな大学だったこともあり1年間の交換留学を体験しました。卒業後は通信会社に就職。総合職として東京を拠点に名古屋など地方勤務を経て、キャリア後半は海外の調査研究に携わっていました。

 

そんな企業人としての生活を送っていた2011年3月、東日本大震災が起こりました。当たり前だと思っていた毎日の生活や家族との関係、社会とのつながりを見直し、自分の生き方を考える大きなきっかけとなりました。

 

被災地では日常生活における支援が始まるなか、被災した方々のこころのケアについても話題になっていました。その後の原発事故のニュースに緊張感を覚えるなかで、自分は「何が求められているか」「何ができるか」「何をすべきか」を問い続けていました。翌年には10数年勤めた通信会社を退職。大学院に進学し、臨床心理士への道を歩み始めました。

 

通っていた大学院は、こころの傷(トラウマ)や被害者支援に特色ある研究活動を展開していました。

 

自然災害だけではなく、学校での自殺や事故、いじめや性的被害、家庭の不和、虐待なども子どもたちの心身に大きな影響を与えます。大学院生活のなかで、トラウマを受ける体験は子どもたちの生活に潜んでいることを知り、学校臨床やトラウマケアに軸足を置いた研究に打ち込むようになりました。

 

犯罪心理を扱う教授のもと、精神鑑定のお手伝いをするなかで刑事事件の加害者に会うことも。怖い印象よりも精神的な脆弱性やエネルギーの低さを目の当たりにし、ネグレクトなど生育歴について考えさせられることの多い体験でした。神奈川県の性被害ワンストップ支援センター「かならいん」の立ち上げにも携わり、悩み不安を抱える方たちと向き合ってきました。

 

教育委員会のこころの緊急支援チーム(Crisis Response Team:CRT)の活動にも参加。小中高校で重大な事件や事故が起こった際、子どもたちのこころをケアする緊急支援チームが学校現場に派遣されます。動揺が広がる児童生徒や教員、保護者会のサポートなど、残された人たちに寄り添い、場のケアや心理教育を行っていました。

 

災害や事故に遭遇して強い恐怖や衝撃を受けたとき、落ち着くことも大切ですが、無理に感情を抑えないようにすることも大変重要です。子どもたちのこころのケアに取り組むなかで、緊急時ではない日常生活においても、さまざまな気持ちを話してくれるようになりました。

オススメの1冊

『アルジャーノンに花束を』

SF小説/1959年4月初版発行/著者:ダニエル・キイス/出版社:早川書房

https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000012638/

主人公の日記のような心理描写から、自分を理解することやその不安、周囲との葛藤が丁寧に表現されています。大学時代に初めて読み「自分らしさとは何か」について考えさせられた1冊。長所と短所は表裏一体で、不得意なことが周りの助けになっていたり自分らしさになっていたりもする。患者さんが読まれていることも多く、改めて読み返しても涙涙の感動だけではない奥深さを感じます。

<この記事を書いた人>

Hara Mihoko
臨床心理士・公認心理師
原 美穂子
Hara Mihoko
略 歴
愛知県出身。大学在学中に交換留学を経て、卒業後、通信会社に勤務。東日本大震災を機に臨床心理士をめざして退職。武蔵野大学大学院では、被害者支援やトラウマケアの研究、学校における危機管理や緊急支援対応などの実践的な活動を行う。東京都ひきこもりサポート支援、神奈川県性被害支援センターで心理相談に携わるなど、一貫してこころケアの現場に立つ。現在は、スクールカウンセラーとして児童生徒や保護者、教員の心理相談のほか、精神科クリニックにて幅広い世代を対象にカウンセリングを行っている。
専門分野
臨床心理学
学校臨床
トラウマケア

▼紀要論文
「自然災害時に子どもの心のケアに携わる教員のニーズに関する研究 : 関東圏で東日本大震災を体験した教員のインタビュー調査」
http://id.nii.ac.jp/1419/00000250/
趣 味
旅行/スポーツ観戦/F1観戦
のんびりした田舎で遺跡巡りの旅もいいし、都会の美術館やショッピングも好きです。スポーツはライブ観戦がいいですね。大好きなF1レースの爆音はたまりません。
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