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vol. 9-3

“先取りしない”コミュニケーション

勤務する精神科病院に相談に来る子どもたちは、「何か上手くいかない」という思いを抱いています。長引くコロナ禍で直接顔を合わせてコミュニケーションすることが減った今、この「何か上手くいかない」という思いを、さらに募らせている子どもたちが多いように感じます。


子どもたちは保護者の方に連れられてくることがほとんどですが、最近は自分自身の希望で来院することも増えています。以前と比べ、インターネットなどが発達しているため、自分から情報にアクセスできることが影響しているのかもしれません。「自分なりに考えて助けを求めること」は大切な力だと思います。


子どもたちのカウンセリング時に気をつけていることは、先取りしないようにすること。


話を聞いているとつい「それはつまり、こういうことだよね」と相手より先取りして話したくなることがあります。でもこれって、実はそうではないことが多く、相手の言葉とズレが生じやすくなります。なので、ゆっくり待って、本人の言葉で話してもらうよう心がけています。


そうすると、本当の気持ちや思いに気付くことも多いもの。先取りしてしまうのはたいてい、こちらが待てないときですが、相手が話し出すまでは5秒から10秒の一瞬。ちょっと我慢して相手が話し出すまで待つことが大切です。


確認したいときは「今の話を聞いてこう思ったのだけどあってる?違ったら教えてね」といった配慮が必要でしょう。


教育の現場は忙しく、なかなかまとまって時間を取ることが難しいことも多々あると思いますが、少し待って本人の言葉を聞いてみると、生徒たちの理解がより深まるかもしれません。


大学院の研究テーマでもある「アスリートの心理支援」においても、こうしたカウンセリングの姿勢は変わりません。スポーツカウンセリングは、スポーツ選手だけでなく、競技場面に関わるすべての人を対象とした心理援助です。

「スポーツ選手への特別なカウンセリングはほとんどないと考えた方がわかりやすい」という先生もいるほど、スポーツ選手だからといって何か特別な技法を使うことはありません。もちろん、競技の特徴や、スポーツ界独自の環境や問題を意識してはいますが、普段のカウンセリングと大きくは変わらないのです。


「結果が残せない」「本番で力が発揮できない」という相談にも、話を先取りせずにまずは聞く姿勢が大切です。

コミュニケーションのワンポイント

相手になったつもりで話を聞いてみる

コミュニケーションというと、つい、どのように話すかに焦点が当てられがちですが、一番大事なのは「相手の話を聞くこと」。自分だったらこう思うのに…という気持ちは一旦脇に置き、相手の立場になって聞いてみると、誤解が解けたり、新しい考え方に気づけたり。自分の話は二の次にして、まず話を聞くところから始めてみてはいかがでしょうか。

<この記事を書いた人>

Washizuka Kohji
臨床心理士・公認心理師
鷲塚 浩二
Washizuka Kohji
略 歴
東京都出身。上智大学大学院総合人間科学研究科を修了後、福祉系大学の学生相談室にて学生との個人面接や教職員向けのコンサルテーションに従事。その後、東邦大学医療センター大森病院精神神経科にてユースデイケアのスタッフの一員に。思春期・青年期を対象に、精神疾患の再発防止や社会復帰を目的としたリバビリテーションに携わる。緩和ケアチームに異動後もデイケアのプログラムをサポート。現在は、精神科病院の臨床心理士として、児童思春期から青年期、老年期までの幅広い層を対象にカウンセリングや心理検査を行っている。
専門分野
臨床心理学
スポーツカウンセリング
趣 味
スポーツ(観るのも、するのも!)/カフェ巡り

2歳から現在まで続けている水泳をはじめ、スポーツ全般が大好きです。大学時代はコーヒーショップでアルバイト。美味しいコーヒーを求め、フラフラと散歩するのが最近のマイブーム。
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