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vol. 9-1

アスリートの心理支援

心理士を志すようになったのは大学時代。

 

将来、何かしらの専門職に就きたいと大学院進学を考えてはいたものの、大学入学時は、心理士はまだ視野に入っておらず、外国語系の学部で言語習得や言語発達について学んでいました。

 

人はどのように言語を獲得していくのか。
どのように言葉が発達していくのか。

 

その過程を学ぶことはとても興味深いものでした。

 

また、教員免許を取っておこうと教職課程も履修するなかで、心理学やカウンセリングに関する講義があり、「心理学って面白い!」「カウンセリングってすごいなぁ」と感じるように。

もともと言語習得や言語発達の学びは「発達心理学」に近い分野であり、当時から「言語学」と「心理学」が交わるようなところに興味があったのかもしれません。

 

そして、運動部に所属していた私は、友人が大きなケガをし、部活やスポーツそのものから離れる姿を幾度となく見てきました。友人たちは悩みや不安を抱えながらも話せる場が少なく、(あくまでも友人としてではありますが)話を聞くことが多々ありました。

 

スポーツの世界では、心理面のサポートはトップアスリートや一部の体育大学など、全体で見るとほんの一握り。治療やリハビリテーションといった医学的なサポートは充実している一方で、心理的なサポートは不足しているように思います。

スポーツをしている人たちの力になりたいと、大学院の専攻は心理学に決めました。大学院ではアスリートの心理支援について研究を重ねました。私はプロアマ問わず、競技としてスポーツをしている人を“アスリート”として捉えています。

 

大学院の研究テーマは「ケガをしたアスリートの心理支援について」。

ケガはスポーツにつきものですが、アスリートにとって、ケガによって競技から離れることの心理的な負担はとてつもなく大きい。

チームメイトにポジションが奪われるのではないか。
自分のアスリートとしてのアイデンティティが失われるのではないか。

ケガを克服し、元いた場所で活躍できるのがベストですが、実際はケガが原因となり戻れない人もいるのが現状です。しかし、スポーツの世界においてケガや引退はネガティブなこととしてタブー視されてきたように思います。

 

こうした背景から、ケガはアスリートの根幹に影響を及ぼすものと捉え、臨床心理学の分野から、その支援についての研究と実践を行っています。

臨床心理学だからこそ扱える分野であり、スポーツメインの価値観とは異なった視点から広くアスリートを支えていきたいと考えています。

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オススメの1冊

『一瞬の風になれ』

小説・第一部2009年7月発売/著者:佐藤 多佳子/出版社:講談社
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205117

累計100万部のヒット作となり、マンガ化・ドラマ化されたスポーツ青春小説。主人公たちと同じ高校生の頃に読んだ、温かく、まっすぐな本です。高校3年の夏のインターハイまで全3巻(イチニツイテ・ヨウイ・ドン)ありますが、一気に読めてしまいます。人の強さや弱さ、優しさ、頑張ることの大切さだけでなく、その苦しさや苦い想いまでもを爽やかに描いた作品です。

<この記事を書いた人>

Washizuka Kohji
臨床心理士・公認心理師
鷲塚 浩二
Washizuka Kohji
略 歴
東京都出身。上智大学大学院総合人間科学研究科を修了後、福祉系大学の学生相談室にて学生との個人面接や教職員向けのコンサルテーションに従事。その後、東邦大学医療センター大森病院精神神経科にてユースデイケアのスタッフの一員に。思春期・青年期を対象に、精神疾患の再発防止や社会復帰を目的としたリバビリテーションに携わる。緩和ケアチームに異動後もデイケアのプログラムをサポート。現在は、精神科病院の臨床心理士として、児童思春期から青年期、老年期までの幅広い層を対象にカウンセリングや心理検査を行っている。
専門分野
臨床心理学
スポーツカウンセリング
趣 味
スポーツ(観るのも、するのも!)/カフェ巡り

2歳から現在まで続けている水泳をはじめ、スポーツ全般が大好きです。大学時代はコーヒーショップでアルバイト。美味しいコーヒーを求め、フラフラと散歩するのが最近のマイブーム。
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