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こころの専門家リレーメッセージ
きっかけは、隣の席の親友
精神科医
阿部 尚


なぜか学生の頃から、個性的すぎて周りから浮いていたり、悩みを抱えていたりするクラスメイトが周りに集まってくる傾向がありました。家出をした、リストカットをしてしまった…など、今思えば結構ヘビーな打ち明け話が多かったです。でも、それぞれの事情を抱える彼女たちの言葉を遮ることなく、苦もなく1時間でも2時間でも話を聞いていました。良くも悪くも、ただ話を聞いてくれる存在として、相談しやすい相手だったのかもしれません。
相手の身になって話を聞くこと。
これって私の特技なのかな?とぼんやりと考えていましたが、まだその頃は精神科医という職業には結びついていませんでした。高校生の自分にとって、学校は勉強よりも友人に会える場所であり、卒業後の進路は定まらないまま3年生になりました。
親の勧める進路に従うべきか迷う私に、医者の娘だった親友から「だったら、一緒に医者をめざさない?」とノリで声を掛けられ、「この子と一緒に働けたら面白そうだなぁ」と私も志望先を決めました。
目標ができると、その達成のために必要な努力をするのは嫌いじゃない。成績が悪くても、ゴールに向かって積み上げる根気さえあれば何とかなると信じ、コツコツ毎日勉強をして念願の医学部に合格しました。
研修期間が終了したとき、研修を一生懸命やり過ぎて「医者として働くの疲れたなぁ。このまま辞めるか休みたい」と、ちょっとした燃え尽き状態になっていました。学年担当だった精神科の教授に相談したところ「じゃあ、休めばいいよ。辞めるのはいつだって辞められるのだから、休んでから考えなよ。ただ君は精神科医に向いているから十分休んだらウチにおいで」とアドバイスをもらいました。本当は、外科系に進もうと思っていたのですが、教授の一言がそのときの私の胸にすとんと落ち、「私の強みが生かせるかも」とそのまま精神科に入局しました。
精神科医になったことは、成り行きのようなご縁だと思い返す一方で、宿命に感じることもあります。高校時代のあの頃と変わらず、患者さんそれぞれの話に耳を傾け、人生に深く関われる点にやりがいを感じています。
高校時代、私を誘ってくれた親友も今では同じ医局で働く精神科医です。
『櫻の園』
漫画・1994年12月発売/著者:吉田 秋生/出版社:白泉社https://www.hakusensha.co.jp/comicslist/42022/
映画や舞台で何度もリバイバルされているマンガです。高校生の頃に初めて読んで以来、大人になった今も、時々読み返しています。思春期の女の子の繊細なこころの動きや、女子ならではの人間関係などが描かれ、読むたびに、全く異なる読後感が生まれます。年を重ねるごとに感情移入できる登場人物も変わっていくので、女子学生にはぜひ読んでほしい作品。男子学生にも、同世代の女子が考えていることが垣間見られるのでオススメです。
<この記事を書いた人>

双極性障害
産業精神医学(職場のメンタルヘルス)
高校生の頃、感覚的に楽しめる笛に魅了されて以来、笛のコレクターです。最近、雅楽で使われる龍笛を習い始めました。