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vol.26-2

やさしさの定義

大学時代は青年期の友人関係をテーマに研究。当事者である若者がこれまでどんな経験をし、どんなことを大事にし、どんなことを望んでいるかといった青年期の世界に触れるために「やさしさ」を切り口に探求しました。


大学生300人・高校生300人の計600人を対象に、相手のどのような言動にやさしさを感じるかをアンケート調査し、その結果を卒業論文にまとめました。


その当時、若者の人間関係の希薄化が問題視されていました。それまでは叱ることや厳しく接することがやさしさとされていましたが、近年はそうした態度はタブー視され、波風立てず、相手に合わせることが“やさしさ”とされてきているという指摘があり、この態度の変化が“希薄化”として語られていました。


しかし「若者の人間関係が希薄化している」といった見方自体が、外側からの評価や判断にすぎません。当時大学生だった私自身も友人関係は楽しいばかりではなく、悩んだり後悔したりもしていたので、そもそも「やさしさ」ってなんだろう?という素朴な疑問がこの研究テーマにつながりました。


アンケート調査を通して、「ほどよい」という考え方にキーポイントがあると感じました。


この「ほどよさ」は外から見ると希薄に映るかもしれませんが、実際には、適度な距離感こそが「やさしさ」として受け取られていることがわかりました。ただ、そのほどよさは一律ではなく、相手の感じ方や状況によっても変わります。時には、敢えて踏み込むことが良いと判断される場合もあります。


大学院では、主任相談員としてひきこもりのご本人やご家族への支援に携わるなかで、日々寄せられる悩みを通して「ひきこもりの若者が抱える生きづらさと支援」という研究テーマが生まれました。どんな関わりができるだろうかと、仲間である相談員と話し合ったことが大きな支えとなりました。


対人関係において「ほどよく」という曖昧なものが求められていることが、生きづらさの一因になっているように感じました。暗黙のうちに察することが求められる。そうした環境にいると、むしろ察しすぎてしまう。これは相手の思いなのか、自分の思いなのかが区別がつかなくなることで自分自身をすり減らし、生きづらさにつながっているのかもしれません。


ひきこもり当事者の中にあった理想像や社会のイメージが現実に触れることで少しずつ変わっていく場面があります。誰かのリアルな言葉から、自分の中で膨らんでいたキツいイメージは思っていたほどではないのかもしれない。そんな、少しやさしい現実感に触れると、一歩踏み出す勇気に変わることがあります。


「本人がどう感じているか」という当事者の視点を持つこと。ひきこもりの支援や臨床の現場で私が大切にしている姿勢です。

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日常で使える!コミュニケーションのワンポイント

まずは、相手の話に耳を傾けて「聴く」

「友だちに『〇〇〇〇〇』って返しちゃったけど、どう思われたか不安…」や「気の利いた返答ができなかった…」といった相談を受けることがあります。会話をしていると「何と答えるか」に意識が向きがちですが、実は「どのように相手の話を聞いていたか」の方がずっと大切なのかもしれません。親身になって話を聞いてくれた人を思い出すと、その人が「何を語ってくれたか」よりも、話を聞く姿勢や表情といった「どのように聞いてくれたか」の方が強く印象に残っていることに気づきます。

<この記事を書いた人>

Koshi Megumi
臨床心理士 公認心理師
幼稚園・小学校教員免許
古志 めぐみ
Koshi Megumi
略 歴
静岡県出身。お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 人間発達科学専攻 博士課程修了。大学心理学部卒業後、大学院修士課程を経て、総合病院の精神科やクリニック、ひきこもり相談機関の主任相談員として勤務。復職支援リワークプログラムや、青年期のひきこもり支援に携わる。博士課程で「ひきこもりの若者の生きづらさと支援」をテーマに研究を重ねる。現在は、大学保健センターにて、学生からのメンタルヘルス相談を中心にカウンセリングや検査などに応じている。
専門分野
臨床心理学
学生相談
ひきこもり支援
趣 味
ドラマ・映画・ミュージカル鑑賞/おいしいものめぐり/ひなたぼっこ

疲れを感じているときほど、太陽の光や美味しい食事、エンタメなど、身体の外からエネルギー取り込んでリフレッシュ!ミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』のサンドラを流して涙活するのも、最近のマイブームです。
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