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こころの専門家リレーメッセージ
理解することは愛すること
臨床心理士 公認心理師
幼稚園・小学校教員免許
古志 めぐみ
心と心が向き合った仕事がしたいなと最初に思ったきっかけのひとつが、中学生の頃に出会った一冊の本。本ブログの「オススメの一冊」で紹介した全米のロングベストセラー『リトル・トリ―』です。
両親を亡くした幼い主人公が、アメリカの先住民であるインディアンの祖父母と一緒に暮らす日常が描かれています。自然とともに生きるインディアンの精神性から学ぶことの多い作品です。物語全編を通して、魂と魂の深いところで語り合うような、自然の偉大さや神秘に触れる体験となりました。
印象的だったのは、インディアンの言語では「私はあなたを理解している」と「私があなたを愛している」は、同じ言葉が用いられているということ。文脈によって「理解」や「愛」の意味を帯び、理解することと愛することが同一であることに感動しました。
主人公の祖父は、インディアンへの偏見を持つ人に対しても腹を立てることはなく、その人の立場や気持ちに思いを馳せます。「知らないのだからしょうがない」と受け止める懐の深さを持ち、相手からどう思われようと揺らがない、「しなやかな強さ」や「やさしさ」を感じました。
当時中学生だった私にとって、この“人と向き合う姿勢”は、まるで稲妻が走ったような衝撃とともに心に刻まれました。相手を愛しているから、理解したいと思う。相手が歩んできた人生を想像し、理解しようとするから深く愛することができる。理解しているという完成形ではなく、理解しようとする気持ちそのものが愛なのだと教えられた気がしました。
この本を紹介するにあたり読み返すなかで、私がカウンセリングにおいて大切にしているの「つながり」や「理解しようとする姿勢」の原点が、この物語にあったことに改めて気づかされました。
また、『リトル・トリー』に出会った頃と同じ時期に放映されていた学園ドラマ『金八先生』で、家庭裁判所の調査官という職業を知りました。
ある回では、金八先生の教え子の兄がひきこもり状態のなかで親を刺し、逮捕されるというショッキングな内容が描かれており、こころのケアや「誰かと向き合う仕事」の存在を初めて知りました。高校時代も非行やひきこもりの背景に関心があり、非行少年に関する本を読むなかで「臨床心理士」という職業があることを知り、心理学を学ぶために大学へ進学しました。
大学では、子どもや若者といった思春期・青年期に着目し、「やさしさ」を切り口に、友人関係をテーマとした研究に取り組んでいました。
『リトル・トリ―』
小説・1991年11月発売/著者:フォレスト・カーター/出版社:めるくまーるhttps://www.merkmal.biz/1-064.html
幼くして両親を亡くした主人公、リトル・トリーがインディアンの祖父母に引き取られ、自然の中で一緒に暮らしながら成長していく物語。インディアンに対する差別や偏見にさらされながらも、誇り高く、凛として生きる登場人物たちの姿に心を打たれます。その強さの源は「つながり」なのではないか。必ずしも親でなくても、先祖や自分のルーツ、自然とのつながりでも良い。リトル・トリーがそうしていたように、朝日に包まれたり、木々の下で深呼吸したり、何かとのつながりを感じることで「しなやかな強さ」が生まれる。そんなことを教えてくれた奥深い一冊です。
<この記事を書いた人>
幼稚園・小学校教員免許
学生相談
ひきこもり支援
疲れを感じているときほど、太陽の光や美味しい食事、エンタメなど、身体の外からエネルギー取り込んでリフレッシュ!ミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』のサンドラを流して涙活するのも、最近のマイブームです。

