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こころの専門家リレーメッセージ
インターネット依存は氷山の一角
児童精神科医・精神科医
舩渡川 智之
専門は児童精神医学です。若者に近年多いとされるインターネット依存症やゲーム依存症の診療にあたっています。
しかし、ネット依存は特殊なものではなく、“依存症”というひとつの症状と捉えています。事実、外来の子どもたちの多くは“インターネット依存”。ゲームをしながら診察室に入ってきたり、保護者の方がお話しされている間、ずっとスマホを見続けていたりすることも珍しくありません。ネットやゲームに逃げ込む背景は別にあり、さまざまな問題の氷山の一角と考えています。ネットやゲームに没頭する様子は、はたから見て分かりやすいため医療につながるきっかけになりやすいのですが、そのものが問題ではありません。また、巧妙なネットやゲームを止めるミラクルな言葉はなく、都内でも専門クリニックは少ないでしょう。
見えている症状ではなく、子どもたちのいろんな側面を注意深く見ること、そして身近な大人の関わり方が重要だと考えています。
研究としては、児童精神科の先生方と共同で、中学校生徒を対象とした「こころの健康診断」の開発に向けた研究に携わっています。そのほか、中学校や高等学校の養護教諭を対象とした精神保健講習会「城南ティーンこころのメンテ研究会」を通して、教員のメンタルヘルスリテラシー向上にまつわる研究を行っています。2014年より、年2回程度、会員の教員の先生方に向け、うつ病やストレングスなどテーマ別の講習会や相談会を開催。コロナ禍となってからは、オンライン開催で続けている活動です。
普段は、大学病院で児童青年期の診療のほか、入院患者、一般外来、そして精神科専門医の育成にも携わっています。
児童精神科医は子どもたちの人生に大きな一石を投じる役割として、日々緊張や苦悩を抱きつつ関わっています。子どもたち本人も対人緊張が強く、ご家族との良好な信頼関係を維持するという最低水準の診療を提供するだけでも大変難しい局面もあります。短期間で結果を出せることはほぼありませんが、辛抱強く関わっていくなかで状況が好転すると、少しだけ安堵を感じます。
「言うは易く行うは難し」
大学医学部生の頃、勉学と部活動の両立に苦労した思い出があり、こころに響くことわざです。学生時代から現在まで、人間としての価値を考えるときにも参考になる言葉だと思っています。<この記事を書いた人>
学校精神医学
予防精神医学
精神科リハビリテーション
中学時代はバスケットボール部に所属。今もシューティング練習だけは続けていますが、現在は観る側でバスケを楽しんでいます。シーズン期間中は、ほぼすべてのNBAの試合をインターネット観戦。職場のある大田区のプロバスケチーム「アースフレンズ東京Z」を応援しています。