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vol. 11-2

インターネット依存は氷山の一角

専門は児童精神医学です。若者に近年多いとされるインターネット依存症やゲーム依存症の診療にあたっています。


しかし、ネット依存は特殊なものではなく、“依存症”というひとつの症状と捉えています。事実、外来の子どもたちの多くは“インターネット依存”。ゲームをしながら診察室に入ってきたり、保護者の方がお話しされている間、ずっとスマホを見続けていたりすることも珍しくありません。ネットやゲームに逃げ込む背景は別にあり、さまざまな問題の氷山の一角と考えています。ネットやゲームに没頭する様子は、はたから見て分かりやすいため医療につながるきっかけになりやすいのですが、そのものが問題ではありません。また、巧妙なネットやゲームを止めるミラクルな言葉はなく、都内でも専門クリニックは少ないでしょう。


見えている症状ではなく、子どもたちのいろんな側面を注意深く見ること、そして身近な大人の関わり方が重要だと考えています。


研究としては、児童精神科の先生方と共同で、中学校生徒を対象とした「こころの健康診断」の開発に向けた研究に携わっています。そのほか、中学校や高等学校の養護教諭を対象とした精神保健講習会「城南ティーンこころのメンテ研究会」を通して、教員のメンタルヘルスリテラシー向上にまつわる研究を行っています。2014年より、年2回程度、会員の教員の先生方に向け、うつ病やストレングスなどテーマ別の講習会や相談会を開催。コロナ禍となってからは、オンライン開催で続けている活動です。


普段は、大学病院で児童青年期の診療のほか、入院患者、一般外来、そして精神科専門医の育成にも携わっています。


児童精神科医は子どもたちの人生に大きな一石を投じる役割として、日々緊張や苦悩を抱きつつ関わっています。子どもたち本人も対人緊張が強く、ご家族との良好な信頼関係を維持するという最低水準の診療を提供するだけでも大変難しい局面もあります。短期間で結果を出せることはほぼありませんが、辛抱強く関わっていくなかで状況が好転すると、少しだけ安堵を感じます。

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好きな言葉・格言

「言うは易く行うは難し」

大学医学部生の頃、勉学と部活動の両立に苦労した思い出があり、こころに響くことわざです。学生時代から現在まで、人間としての価値を考えるときにも参考になる言葉だと思っています。

<この記事を書いた人>

Funatogawa Tomoyuki
児童精神科医・精神科医
舩渡川 智之
Funatogawa Tomoyuki
略 歴
栃木県出身。山形大学医学部医学科卒業。初期研修医時代の小児科研修での経験が児童精神科医を志すきっかけに。2年間の初期研修を経て、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室に入局。同医局の関連病院等で5年間の研修の後、東邦大学医学部精神神経医学講座の助教に就任。以来、一般精神科臨床の傍ら、児童精神科医としての臨床、精神病の予防や回復のためのデイケアの診療に携わる。
専門分野
児童精神医学
学校精神医学
予防精神医学
精神科リハビリテーション
趣 味
バスケットボール

中学時代はバスケットボール部に所属。今もシューティング練習だけは続けていますが、現在は観る側でバスケを楽しんでいます。シーズン期間中は、ほぼすべてのNBAの試合をインターネット観戦。職場のある大田区のプロバスケチーム「アースフレンズ東京Z」を応援しています。
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